「おい、ドラゴン野郎」

「……その呼び方、どうにかならないの?」

「ならねえ。そんなことはいいから次の勝負だ。いいか?」

「はあ……。ダメと言ったところで、聞かないでしょう。君は」

ぼう、と揺れる赤の煌めきは僕の視界の隅を掠めて消えていく。

詠唱もなく放たれたそれは、誰が見たって認めるしかないであろう、純度の高い魔力の塊。

羨ましい。僕にはそこまでその力を扱える技量は無い。有り余る魔力は確かにこの身を駆け回っているのをいつだって感じるのに、上手く出力することは僕は極めて不得手で。

その代わりと言うのだろうか、極めて僕が得意であったことは。

「甘いね。君、僕をしっかり狙ってるの?」

「命を取るくらいの勢いで来なよ。真剣になろう」

全身に血が巡る。僕の命を守り、そして相手の命を狙わんとするこの鋭い鉄の相棒を握る右手に力が入る。

先程の炎は僕をまるで狙っていない。ただの脅しと言えば聞こえはいいが、本当の戦場ではそんなものは無い。

最初から命を狙え。

「覚悟しなよ。ほら、早く!」

自分を、そして大切なものを守りたいのなら。

手加減などするな。

それが優しさでもあり、剣を向ける相手への礼儀でもあるのだから。